この”Time”は2002年にアメリカのMatador Recordsから発売された2枚組のCD。
1枚目はROIRというカセット限定レーベルが1984年に発売した”R.I.P”をリマスターしたものに
いくつかの音源を付け加えたものです。
2枚目はロンドン.ミュージック・マシーンでの1977年のライヴ
11曲目ではジョン・ライドンのアンコールの煽りが入っています。
それにニューヨーク、CBGBでの1983年でのライヴ。
リチャード・ヘルといえば、パンクファッションの原型を作った人として知られていて、
マルコム・マクラーレンがセックス・ピストルズを作る時に参考にしています。
本名は、リチャード・レスター・マイヤーズ(Richard Lester Meyers)
ケンタッキー州レキシントン生まれ。
テレビジョンのトム・ヴァーレインとは高校の同級生で 本名はトーマス・ミラー(Thomas Miller)、
ニューヨークに出てきます。
最初リチャード・ヘルはトム・ヴァーレインのマネージャーをやっていたらしく、
トムの勧めでベースを始めたようです。
その後、同じ高校の同級生、ビリー・フィッカとネオンボーイズを結成する。
詩人に憧れていた二人は、リチャード・レスター・マイヤーズはリチャード・ヘル(地獄)、
トーマス・ミラーはポール・ヴェルレーヌ(Paul Verlaine)の綴りを英語読みして
トム・ヴァーレインと名乗るようになる。
その後、リチャード・ヘルはテレヴィジョンやハートブレーカーズを経て、
リチャード・ヘル&ヴォイドイズを結成します。
リチャード・ヘルとボルヘスの結びつきは意外でしたが、この”Time”は1978年に作られた。
ちょっとメロディアスな曲です。
ちょうどこの頃ボルヘスが人気だったのかもしれないなぁ。
1977年にファーストアルバムを発表して1年すぎた頃の曲で、
アルバム”Time”のライナーノートにはご丁寧にも、本人の詳細な”Time”の歌詞の説明がされている。
リチャード・ヘルはパンクのオリジネーターとして知られますが、
代表曲”Blank Generation”にしても、時代の空気を捉える歌詞がいいですね。
“Time”は当時(1978年)、僕が読んでいた詩にインスパイアされた曲だ。
それは”パリ1856″というボルヘスの詩だった。
詩人のハインリッヒ・ハイネが、人生の終わりで”うちひしがれ、心乱れ”ながらも、
自分が死んでいくという感覚に慣れてしまうという内容だ・・・。・・・彼は壊れそうな歌に想いを馳せる
奏でられているのは彼自身 だが彼は知っている
それは木の歌でもなく 鳥の歌でもない・・・
淡い日々から聴こえてくる 時が流れる音なのだこれは作家が、作品の創造者というよりはむしろ、彼らのミューズ、神、
普遍的無意識などに操られる楽器であるというクリシェ(常套句)だ。
(いずれにせよ、彼らは”インスパイアされる”のだがーそう、この作品は基本的に
“インスパイアされる”、とはどういうことかを示している。)
だがこの詩篇は、別の何かを示唆していもいるー時は人の中を吹き抜け
その人の生涯という曲を奏でる。
我々は時によって奏でられることしかできない。
我々の行為すべては曲であり、それを本当に聴くことはけっしてできない。
なぜなら我々はその曲でできているのだから。それに聴いたところで何かが
解るわけでもない。
ほんの少しでも”解った”と思った時にはすでに次の瞬間がやってきていて、
世界が変わってしまっているのだから。(さらにボルヘス的な考察を加えるならー人間の本質はその死後、長い時間が過ぎて
彼、もしくは彼女が存在したことを覚えている人もいなくなり、
記憶もすべて消滅した時になってはじめて、正しく理解されるのではないだろいうか。
もっとも、僕はそこにはまだまだ到達していないのだが・・・・。)
そういうわけで、悲しげな調べにのせて時が書き残したのはこんな時だった。
それからさらに10数年が経って、果たして私の”Time”はどうなるのだろうか?
Time and time again I knew what I was doing and
Time and time again I just made things worse
It seems you see the most of what is really true when
You’re stepping into your hearseOnly time can write a song that’s really really real
The most a man can do is say the way its playing feels
And know he only knows as much as time to him revealsAnd when I want to write a song that says it all at once
Like time sublimely silences the whys
I know that if I try I’m going to take a fall at once
And splatter there between my liesOnly time can write a song that’s really really real
The most a man can do is say the way its playing feels
And know he only knows as much as time to him revealsWe are made of it and if we give submission
Among our chances there’s a chance we can choose
And if we take it, by uncertainty’s permission
Then it’s impossible to loseOnly time can write a song that’s really really real
The most a man can do is say the way its playing feels
And know he only knows as much as time to him reveals